天然お嬢様の恋はどこまでもマイペース
都心のビジネス街。
30階建てのビルの2フロアが泰介さんのオフィス。

言われた通り、私は一階のカフェで待つことにした。

普段は来ることもない街。
数ブロック先にはパパの会社もあるから土地勘がないわけでもないけれど、用事がない限り足を向けることのない場所。

この前来たのはいつだろう・・・

あっ。
記憶をたどっているうちに、思い出した。

そうだ、二十歳の時。
泣きながら、
雨の中を、
1人で歩いた。
あの時・・・

「お待たせしました」
運ばれていたコーヒー。

砂糖とミルクを入れてかき混ぜる。
グルグルと渦を巻くカップを口に運ぶと、

「うーん、美味しい」
ホッと息をついて、窓の外を見た。
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