天然お嬢様の恋はどこまでもマイペース
「私、日本に帰ってくることにしたの」
「えっ?」
唐突に言われ、ボカンと口を開けてしまった。

「最近は日本の仕事が増えて、1年の半分以上は日本だったんだけれどね。本格的に日本で仕事をしようと思うの」
「モデル?」
「ええ。でも、映画の話も来てるから、お芝居も初めてみる」
ふーん。
夏輝なら、きっとうまくこなせるだろう。

「で、彼女いくつ?」
やっぱり聞くのか。

「22歳」
「ふーん」
意外ねって顔をしてる。

「お前はどうなんだよ。男はいないのか?」
これだけの美女だ、モテないはずがない。

「いるわけないでしょ。ここまで必死に突っ走ってきたんだから、仕事以外のことを考える余裕はなかったわ」
「ふーん」
そんなものかね。

「来月にはニューヨークの家を引き払って日本に帰ってくるの。そうしたら、また飲みましょう。一颯も、彼女さんも誘って」
ねっ。と、雑誌で見るのと同じ笑顔を向ける夏輝。

「あ、ああ。そうだな」

この時、俺は一瞬変なことを考えてしまった。
夏輝はもう一度、俺とやり直したいと思っているんじゃないだろうか。
もしかして、俺に未練が・・・なわけないか。

俺たちが別れてもう6年。
もちろん嫌いで別れたわけではないし、夏輝を失った喪失感は大変なものだった。
でも、会えない時間が少しずつ心の傷を埋めていった。
やっと平気になれた。
それを・・・
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