天然お嬢様の恋はどこまでもマイペース

「少なくとも俺は、夏輝とよりを戻すつもりはない」
今は爽子がいるんだから。

「夏輝の気持ちまで責任は持てないか？」
「まあな」
付き合っている人がいるのはちゃんと伝えた。
夏輝だって、分かっているはずだ。

「じゃあ、爽子さんに夏輝と会ってるって言えるか？」
「いや、それは・・・」
聞いたところで、爽子が不安な気持ちになるだけだろう。

そもそも、夏輝と会うのだってビジネス上のこと。
仕事で会う以上、話す必要はないはずだ。

「もし、逆の立場だったらどうだ」
「逆って・・・」
「だから、爽子さんに元彼がいて知らないところで会っているとしたら？」
「それはない」
爽子は誰とも付き合ったことがないって言っていたし、仮にそういうことがあったとして、きっと俺に話してくれるはずだから。

「すごい自信だな」
「まあな」
この時、不思議なくらい俺は自信があった。
ただ真っ直ぐに、爽子は俺だけを見ていると信じて疑わなかった。

「どっちにしても、知らないところで元カノに会っていることが分かっていい気分な訳はないんだ。やましいことがないのならなおさら話しておくんだな」
何だろう、今日の一颯は機嫌が悪い。

「分かった」
それ以上言い争う気にもなれず、俺は素直に返事をした。