絵本彼氏と年上の私。




 そんな彼女が持っている絵本に目が行き、そこでやっとそれが自分が描いたものだと気づいて、白は驚愕した。
 その絵本を楽しそうに子ども達が夢中になり見つめたり、何か声を出しながら見ているのだ。
 絵本を描くために保育園や幼稚園などを見学した事はあるし、それなりに勉強してきた。それに、しずくから白の絵本を読んだ時の子どもの反応の話しを聞いたことはあった。
 
 けれど、自分の絵本を見ている子どもを見たことはなかったのだ。正直なところ、見る自信がなかったのだと白は自分でもわかっていた。


 それなりに絵本は売れ、人気があるのを白自身も知っていた。けれど、それは大人が子どもにプレゼントしているものなので、本当に子どもが好きになっくれているのか、自信が持てなかったのだ。
 子どもが自分の絵本を見て、笑ってくれなかったら………そんな事を考えては、見に行く事は出来なかった。


 そして、今、自分の愛しい人が自分の描いた絵本を読み、子ども達は目を輝かせて見てくれている。
 その幸せな光景を、白は目を潤ませながら見つめていた。

 絵本作家として活動してきた中で、これまでで1番「この仕事をしてきてよかった。」と、思える瞬間だった。







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