絵本彼氏と年上の私。




 ☆☆☆




 キッズルームから子どもが姿がなくなり、しずくが一息ついていた時だった。


 「しずくさん。」
 「あ、白くんっ!」


 キッズルームから少し離れた所に、背の高い白が立って手を振っていた。しずくは、すぐに靴を履いて彼に駆け寄った。

 
 「白くん、お疲れ様。お仕事、大変だったね。」
 「すみません、遅くなってしまって………お待たせ致しました。」
 「ううん。大丈夫だよ。ちょっと楽しいことしてたから。」


 しずくは、今までやっていた絵本の読み聞かせ会の話しをしようと、胸をワクワクさせていた。突然誘われた事だったが、やってみて良かったと今は思っていたのだ。
 子ども達と触れあえる時間は、しずくにとって幸せな時間の1つだと改めて知れたのだ。


 「………実はこっそり見てました。」
 

 とっておきの話しをしようとしたが、白は申し訳なさそうにそう言いながらも、微笑んでいた。

 「え!?そうなの?………何か恥ずかしいな………。」
 「そんな事ないですよ。とても素敵でした。あんな綺麗に微笑んでいて、子ども達が羨ましかったです。」
 「………そんな事は………。」


 白は優しくしずくを見つめながら、真っ直ぐな言葉で褒めてくれる。いつもの事とはいえ、今日の白はいつも以上に真剣で、そしてとても幸せそうな表情をしており、しずくはその顔に見つめられて、頬を赤く染めるしか出来なかった。


 「それに、とても感動していたんです。」
 「………感動?………どうして読み聞かせ会で?」
 「はい。………しずくさん、僕の描いた絵本を読んでくれていましたよね。」
 「………そこから見てたの?」
 「はい。」


 思っていたよりも始めの方から白は見ていたのだと思い、しずくはますます恥ずかしくなる。けれど、そんなしずくとは売って変わって白はとても楽しそうだった。



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