絵本彼氏と年上の私。



 しずくが読み聞かせ会の話しをすると、白はとても懐かしそうにしながら話しを聞いてくれた。昔、菫さんがやっていた読み聞かせ会に、白も行っていたようで、それをしずくがやってくれたことが嬉しかったようだった。


 「本当に感動したんですよ。保育士さんってすごいですね。子どもがワクワクするように自然と絵本を読んでいるんですから。」
 「子どもがどんな風に読むと見てくれるかなとか、興味を持ってくれるかは、毎日試行錯誤だよ。」
 「しずくさんが、努力した結果なんですね。」
 「………もう、今日の白くんは私の事褒めすぎだよ。」
 「いつもですよ。僕にとって最高すぎる彼女ですから。」


 太陽が高く上る昼下がり。
 車のフロントガラスには眩しいほどの太陽の光が降り注いでいた。しずくは眩しさで目を細めていると、不意に白が近づく気配を感じた。
 しずくが横を向いた瞬間、彼の手が伸びてきて、しずくの頬に触れた。

 「あっ……。」という言葉を発する前に、その言葉は白の唇に吸いとられた。
 暖かい白の唇の感触が口全体で感じられ、一気にしずくの体が震えた。それは、白を感じられて喜んでいる事だとわかると、しずくは唇から熱が広がっていくのを感じた。
 何度か啄むようなキスをした後、白は物足りなそうな瞳でしずくを見つめた後、前を向いた。


 赤だった信号の光が青に変わったのだ。


 「だから………我慢出来ませんでした。」


 まっすぐ前を向いて運転する白は少し照れた様子だった。けれど、しずくの方が白よりも恥ずかしくなりどうすればいいのかと、おろおろしていた。


 「少し遅刻しちゃいましたけど……今日のデートは僕に任せてください。」


 その言葉の意味をしずくはすぐにわかったが、「うん………。」と返事をして誤魔化してしまうのだった。



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