絵本彼氏と年上の私。
2人手を繋いで歩く。
白が連れてきた場所は、敷地の周りを大きな木が囲んでいる、とても静かな所だった。
その中央にあるのが、大きな建物だった。
綺麗な白と赤の煉瓦道を歩い行くと、そこに「イベントホール」と書かれているのが見えた。
「イベントホール…………あ、ここって、もしかしてっ!!」
「あ、もうわかってしまいましたか?」
「うん!ここに来てみたかったのっ!白くん、早く行こうっ!」
しずくは、走り出そうとして繋いでいた白の手を引っ張って彼を急かした。
すると、白は笑いながら「はい、行きましょう。」と、一緒に走ってくれる。
しずくは、彼の手をギュッと握りしめながら、施設の入り口へと向かった。
大きなガラス張りの入り口には、巨大なポスターが飾られており、いろいろなキャラクターが描かれており、その真ん中に「原画展」と書かれていた。
「やっぱり………原画展やってる!」
「しずくさんと初めてデートしたときに見たアニメの原画展ですよね。僕も来たかったんです。」
「嬉しい………遠くてなかなか行けない場所だったの。………白くん、調べてくれたの?」
「はい。見つけたときは、すぐにしずくさんに教えたくなったんですけど、サプライズにしたかったので、我慢しました。」
恥ずかしそうに笑う白はとても楽しそうで、しずくも嬉しくなる。ただでさえ、大好きなアニメの原画が見れるのだ。しずくは、気持ちが高まっていくのがわかった。
「楽しみだね、白くん。」
「はい。行きましょうか。」
白としずくは、横に並んでゆっくりと原画展の入り口へと向かった。
もちろん、手を繋いだままで。
原画展では、1枚1枚をゆっくり見ていたり、映画のシーンを思い出して語り合ったりと、2人でアニメの世界にどっぷりと浸る時間になった。趣味を理解してくれて、そして一緒に楽しんでくれる白に、しずくは感謝しながら原画展を見て回った。
その後はグッツを見て、買い物をしたり、施設内のカフェで休憩しながら過ごしていた。
カフェからは裏庭が見え、散歩が出来るようになっていた。裏庭は、夕日に照らされて木々や池が赤色にキラキラと光っていた。冬の太陽の光はとても短い。あっという間に暗くなってしまう。
しずくは、夜になっていく寂しい時間帯に白と居れる事が幸せだと思った。
最近はなかなか会えず、出会ったときのように職場に迎えに来てくれて、帰る時間だけ会う事が続いていた。もちろん、白も忙しいので毎日ではない。会えない日が多くなり、寂しく思ってたしずくは、こうやって昼から夜に変わる時に彼と一緒に過ごせているのが、信じられないとさえ思ってしまった。