絵本彼氏と年上の私。
「しずくさん、お疲れ様です。」
黒いコートを着た白は、しずくを見つけるとわざわざ車から出て手を振って近寄って来てくれる。その笑顔はいつもと変わらない。それを見て安心したけれど、少しやつれているようにも感じた。
「お疲れ様、白くん。お迎えに来てくれてありがとう。」
「いいんですよ。寒いので車に入りましょう。」
そう言って助手席を開けてくれる白にお礼を言って車内に入る。暖房を入れてくれているようで、ほんのり温かい空気にしずくはホッとした。
今日は今年度で1番の冷え込みを記録したようで、冷気が肌を刺すような寒さだった。吐いた息は白くなり、道行く人たちもみんな真冬の服装に変わっていた。
「仕事でお疲れでしょうし………どこかに食べに行きませんか?」
「それもいいんだけど………今日、白くんのおうちでご飯作ってもいいかな?おうちの方がゆっくり出来ると思うんだけど。」
「えっ…………僕の家に来てくれるんですか?」
「うん………ダメかな?」
白は喜んでくれるとしずくは思っていた。
けれど、彼の表情は少し戸惑っている様子だった。そして、迷っているのか返事がなかなか返ってこなかった。
迷惑だっただろうか。どこか行きたい所があったのだろうか。白の家に行くのがダメなのだろうか。
しずくは少しショックを受けながらも、「急にごめんね。あの、無理ならいいの。私の家でもいいし、外食でもいいよ。」と焦って返事をした。すると、白も「いえ……ごめんなさい。」と、困ったように微笑んだ。