絵本彼氏と年上の私。
広い図書館だったため、入り口の地図を見た後、しずくは写真集コーナーに向かった。
目的の物は、世界の図書館の写真集だった。人気のシリーズだからか、たくさんの種類が置いてあり、しずくはその中から1冊を取り、パラパラと捲った。
写真の他にも沢山の紹介文があったため、しずくはどこかに座って読もうと辺りをキョロキョロとしていた。
受験シーズンとあって、どこもいっぱいだったため、移動しながら場所を探していると、ある特集コーナーに目が入った。
「保育士が進める絵本。キノシタイチシリーズ」
そこにはそう書かれていた。
キノシタイチは、しずくの好きな絵本作家であり、白の恩師でもあった。
そして、文化祭では直接会って話をすることが出来た人物でもあった。子ども達やその親、そして保育関係の仕事をしている人ならば必ず知っている絵本作家の一人だった。
憧れでもあり、身近な人でもあるキノシタイチの特集コーナーにしずくは近づき、一冊一冊の本を見つめながら、懐かしく見ていた。
自分が読んだことがある絵本がほとんどだったが、古いものでは知らない作品もあった。
それを手を取り、楽しく絵本を見ていた。
すると、ゴホゴホッという深い咳が館内に響いた。その先を見ると、マスクをした白髪混じりのおばあさんが、カウンターで何かを話している。声が出ないようで苦しそうだった。
しずくは「大丈夫かな。」と心配になりながらも、何も出来る事はないとただそのおばあさんを見つめるしか出来なかった。
すると、バックの中のスマホがまたブブブッと震えた。
しすぐは急いでスマホを見ると、白からメッセージが届いていた。「遅れてすみません。今仕事が終わったので向かいます。」と連絡が来ていた。しずくは、「気をつけて来てね。」と返事をし、また絵本に手を伸ばした。