絵本彼氏と年上の私。



 「すみません。晩御飯の準備、全部お願いしちゃって………。」
 「白くん。掃除終わった?」
 「はい。お陰様で。何か手伝う事はありますか?」
 「じゃあ、ご飯をよそってもらおうかなー。」
 「わかりました。」


 夕食の準備を2人で行い、2人で並んでテレビを見ながら鍋料理を食べる。
 そんな穏やかな時間がとても心地よくて、しずくの顔も自然とほころび、白も少し顔色がよくなったように感じられた。「おいしいです。」と、何杯もおかわりをしてくれる白を見て「可愛いな。」なんて思ってしまったのは、彼には内緒だ。


 食事後の後片付けは、「それぐらいは僕がやります。」と白がどうしても譲ってくれなかったため彼にお願いする事にした。
 その間、白はお風呂の準備をしながら過ごしていた。

 すると、すると片付けが終わったのか、浴室に白が顔を出した。

 
 「あの………しずくさん。」
 「うん?どうしたの?」
 「………家に帰る時、車でおくりますね。」
 「え………。」


 しずくは、思わずその言葉を聞いて持っていたスポンジを落としてしまった。慌てて拾い上げて、冷静なふりをして浴槽の泡をシャワーで流した。
 ザーーーッという音が、浴室に響く。
 しずくはその音に負けそうなぐらいの音量で返事をした。


 「………帰らなきゃ、だめ?」
 

 こんな事を言ってはダメだ。
 少し前と同じように、自分だけが彼と一緒に過ごしたいと思っているように思われてしまう。そう思っても我慢出来なかった。
 やっと会えたのに、もう帰らなきゃいけないのだろうか。
 やっと彼との時間を過ごせると思っていたのに。
 そんな気持ちが吐き出されてしまう。



 「いえ………僕も、一緒に居たいです。」



 その言葉とは裏腹に、彼の表情はとても困っており、嬉しそうではないが伝わってきた。

 そんな表情にさせてしまった自分が情けなくて、しずくはすぐに視線を逸らし、シャワーから勢いよく流れ出る水を見つめる事しか出来なかった。


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