絵本彼氏と年上の私。



 「キノシタ先生は、スランプの時どうしますか?」


 今日、この場所に来たのは、その話を聞きたかったからだ。同じ絵本作家として、そして白の恩師として体験談を聞きたかったのだ。
 その人その人で脱し方は違うはずだが、どんな事でも試したいという、藁にも縋る思いだった。

 3人の視線が自然とキノシタの方へ向く。
 すると、キノシタは腕を組んで、「うーん……。」と考えるような仕草を見せた。そして、申し訳なさそうに、白を見て言った。


 「僕はスランプとかあんまり経験したことなくてねー。いつでもいい案が浮かんでくるからさ。」
 「……………。」
 「教授、最低です。」
 「………だから、教授はモテないんですよ。」
 「みんな冷たいなー!それに、僕はモテてますから。」
 「はいはい。子どもにですよね。」
 「だから、違うって!」

 教え子達からの冷めた目線に、キノシタは焦った様子で弁解は始めた。

 「僕は絵本作家の仕事が多いから、結構自由に仕事ができてるからね。まぁ、それでもストーリーとかに悩んだり、思い通りに描けないときもあったよ。」
 「そういう時は、どんな風に乗り切ってたんですか?」
 「単純だよ。失敗しても、描いて描いて描いて………描きまくる。それでもダメなら、諦めるっ!」
 「えぇ!?諦めちゃうんですか?」
 

 真剣に聞いていた青葉が驚きの声を上げた。心花も同じ気持ちだったのが、目と口が大きく開いて唖然としていた。


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