絵本彼氏と年上の私。
しずくは、バックの中にのど飴が入っていたのを思いだし、しずくはそのおばあさんに近づいて声を掛けた。
「あの………よろしければ、こののど飴どうぞ。辛そうですね………。」
しずくが話を掛けると、そのおばあさんは驚いた後、ニッコリと穏やかに笑った。
「あらあら………優しいお嬢さんね。ありがとう、いただくわ。」
「はい。」
上品なおばさんは、しずくから両手でのど飴を受けとると、「ありがとう。」と言い、その場で袋を開けて口の中に入れた。
咳をしながらしゃべる声は、酷く嗄声していて苦しそうだった。
「ありがとう。これで咳も楽になるわね。助かったわ。」
「よかったです。仕事でよく声を出したりするので……いつも持ち歩いてるので、よろしければ何個か差し上げますね。」
「いいの?ありがとう……………。あぁ、もしかして、あなた………。」
「はい?」
おばあさんは、何かを考えたあと、しずくの手を取って強く握りしめた。
しずくは驚きながらも、おばあさんの手を優しい温もりと肌の感触に全く不安にも感じなかった。
「あなた、保育士さんかしら?」
突然の質問に、しずくは戸惑いながらも隠す理由もなかったため「はい、そうですけど………。」と、答えた。
すると、おばあさんは「まぁ!」と声を上げて嬉しそうに微笑んだ。
「絵本を持っているし、優しい雰囲気だったし………そうかと思ったわ。」
「そう、ですか?」
「ええ。実は、あなたにお願いがあるの。」
おばあさんは、ニッコリと微笑み、両手でしずくの手を握りながら、まっすぐと目を見つめた。
「ここで、絵本を読んでくれないかしら。」
その言葉を聞いて、しずくは目を大きくしたまま返事をせずに固まってしまったのだった。