vampire kiss
何度も、エミリーを今すぐ攫ってしまいたいと思った。でも、まだダメだと何度も言い聞かせる。昼間はダメだ。夜にならないと…。

何も知らない連中は、警戒することなく笑い続けていた。



夜は、村をあげてお祝いが開かれた。この村で生まれた女は、この村で生まれた男と結ばれてきた。他の地域の、ましてや貴族との結婚など、村中がお祭り騒ぎになっている。

ケイは村長から酒を注がれ、エミリーはその隣に座って笑っている。二人が仲が良いのは見ていて腹ただしい。

僕はお祝いしているふりをして、周りを見る。屈強な若者たちは、酒のせいで警戒心はゼロだ。この時を待っていたんだ。僕はニヤリと笑う。

「エミリーさん、少しお話が……」

僕は、楽しげに会話をするエミリーとケイに近づく。エミリーは嫌そうな顔をすることもなく、「何でしょうか?」と微笑みを見せてくれた。

「少し、外に出ませんか?今日は月がきれいですよ」

そう言って、僕はエミリーをパーティー会場から連れ出したのだ。

エミリーを攫うために……。
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