vampire kiss
「本当ですね！月がきれい…！」

エミリーは、夜空に輝く美しい月を見上げる。今日の月は、いつもより大きい。輝きもいつもよりある気がする。

「私、幸せ者だなぁ…。こんなにいい村に生まれて、皆さんと巡り合って、愛する人を見つけて…。幸せすぎて逆に怖いです！」

無邪気にそう言うエミリーに、僕は歪んだ笑みで問いかける。

「なら、僕のものになってはくれませんか？」

「え？」

僕はエミリーの腕を掴み、強引に自分の腕の中に閉じ込める。愛しい人は、驚くほど華奢で壊れてしまいそうだ。

「……僕は、ずっとあなたが好きでした。僕のものになってください」

エミリーは、驚いた目で僕を見つめる。しかし、その目はすぐに申し訳なさそうにそらされた。

「……ごめんなさい。私が愛しているのは、ケイさんだけですから……」

ああ、やっぱりダメだったか……。もしもここでエミリーが頷いてくれたら、僕は何もせずにエミリーを城に連れ帰っていた。でも、返事はやっぱりNO。仕方がない。
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