vampire kiss
しかし、そんなことを知らない馬鹿な若者たちは「だろ?」とか「この村は結構有名なんだぜ」と笑う。人間とは、単純な生き物だ。

「ところでよぉ、そろそろ俺たちも誰かと踊らねえか?」

若者の一人がずっと踊り続ける人々の輪を見つめながら言う。

「そうだなぁ。一緒に踊ってくれる美人な子がいればなぁ…」

若者の一人が、自分たちと同じように踊らずに酒を飲む女性たちを見つめる。そして、次々と立ち上がり好みの女性のもとへと歩き出した。

僕の隣には、静かにグラスを傾け続ける若者が一人。その若者は、他の者に比べると体つきはそんなにしっかりはしていないようだ。

「あなたは踊らないんですか?みんな、行ってしまいましたけど…」

僕が声をかけると、若者は「ダンスとか、興味ないですし…」とチーズを口に入れる。

「でも、ある一人の女性のダンスはずっと見ていられますね」

その刹那、僕の心臓が音をたてる。それは、運命を物語っていた。
< 8 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop