アンバランスな想い
「光ちゃんも瑛ちゃんもいないと
静かだね~」

4人掛けの広いテーブルに
お姉ちゃんと二人きりで座っていた

おかずがすごく少なく感じた

「お母さんが美味しい料理を作ってくれてるよ」

「お袋の味ってやつ?」

私は頷いた

私とお姉ちゃんには
もう作ってもらえない

お母さんはいないから

でも寂しいとは思わない
裏切ったお母さんに
戻ってきてもらって
またあ母さんになってもらいたいとは
思わない

料理だって
洗濯だって
掃除だって

もう一人で全部できる

お姉ちゃんがいれば
私は寂しくない

「愛情たっぷりすみれスペシャルはある?」

瑛ちゃんの声が居間に響いた

私が振り返ると
スーツの瑛ちゃんが笑顔で立っていた

「何、人の家に
勝手にあがってるの?」

「ん~
一応、許可はもらってあるよ
光汰から」

お姉ちゃんがあげたであろう
家の鍵を
瑛ちゃんはチラつかせていた

「兄の特権ね」
お姉ちゃんが笑う

「本当はさ~
ベランダからスミレの部屋に
行きたいんだけど

お袋の目が厳しくてな~

自分が家にいる間は
お隣さんにご迷惑を
かけさせません!

とか言って
怖えのなんのって」

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