アンバランスな想い

数学教師 谷山真琴

「ごめんなさいね~
荷物が多いから
手伝ってもらって」

わざとらしいお礼を述べる
お姉ちゃん

ピンクのフリルスカートが
風にのって揺れていた

「悪いと思ってるなら
先生が重たいほうを持ってよ」

「マコ、箸より
重いのは持てないの」

小声でお姉ちゃんが甘い声を出す

「じゃあ、男子に頼んでよ!
私だってか弱い女の子よ」

「スーちゃんは
2リットルのペットボトルを
何本も持ってるじゃない」

「あれは…
食い盛りの猛獣が2人もいるからでしょ!

好きで持ってるわけじゃないの」

「大丈夫よ
保健室の前を通ってあげるから」

は?
どういう意味?

しかも
何で遠回りさせるのよ

数学の研究室に早く行こうよ

重たいんだから

「谷山先生、重たそうですね~」

保健室の窓をあけて
廊下に顔を出してきた瑛ちゃんが
声をかけてきた

重たいのは
私のほうです!

お姉ちゃんは数学の教科書しか持ってません

私はクラス全員のノートと
なんだかよくわからない
教材セットを持ってるんだけど…

「橘さんが優しくて
ついつい甘えちゃうの」

どうしてそう
ポンポンと
口から嘘が飛び出るかね?

「橘さん、重い?」

「平気です」

強がってみる
本当は重くて
下に置いてしまいたい

だから瑛ちゃんとの会話は
短めに!!

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