子猫と私の隠れ家


「なんかさ、杏ちゃんて顔は可愛いけど、つまんないんだよね」


杉崎杏菜、24歳。2年連れ添った彼氏に、突然振られました。


予兆は全く無かった。先週の付き合って2年の記念日には4、5万はするダイヤのネックレスをくれたし、仕事が忙しいといいながらそれなりに作ってくれた。優しくて、仕事ができて、余裕があって、私にとって自慢の彼氏だった。

今日だっていきなりこんなおしゃれなバーに呼び出されて、もしやプロポーズなのかなどうしようとか一人であたふたしていたのに、切り出されたのは別れ話だった。

「あああもう、死にたい」

「お姉さん、もうそのへんで……」

「ほっといて!あいつが置いてった金全部使うから!


マスターにお決まりのセリフで止められながらも、私はひたすらに、浴びるようにチューハイを飲み倒した。

それじゃあごめんね、と彼が置いてったお金は明らかに私達が頼んだカクテル二杯分より多くて、こうして私がヤケ酒をするのを見越していたのだとしたら益々腹が立つ。


ああ、何がいけなかったんだろう。
何が足らなかったんだろう。

大学を出て、夢見てたウェディングプランナーになって。毎日のように誰かの人生で一番幸せな瞬間に立ち会って、おめでとうございます、良かったですね、と馬鹿の一つ覚えみたいに繰り返してるのに、自分はこんなざまだ。

結局私の人生なんて、こんなものなのかもしれない。


昔から顔立ちは悪くない方だったし、コミュニケーション能力は高かったから友達には困らなかったのに、彼氏となると私はてんで駄目だ。

大学ではずっと彼氏無しで、就職してから合コンであいつと出会い、もう全ては順調だと思っていたのに。

私はどこで間違えたんだろう。


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