子猫と私の隠れ家
あいつの置いていったお金を使い果たして店を出ると、眩しいネオンの光に頭がぐらぐらした。さすがに飲みすぎた。
お酒には強い方だけど、こんな飲み方をしたらそりゃそうなる。私はふらふらとした足取りで公園に行き、酔いが冷めるまで少し休むことにした。
時刻は夜中の2時。公園には私しか居ない。ちかちかと弱く光る街灯が、辛うじて足元や手元を照らしていた。
「よいしょっと。…………ん?」
どっかりと勢いをつけてベンチに腰をかけると、柔らかい毛が手の甲に触れた。猫だろうか。
ちらりと手元を見やると栗毛色の毛がもぞもぞと身じろいだ。
「子猫ちゃん。迷子?」
ベンチにまるまる小さな猫。こんなところでひとりぼっちで何をしてるんだろう。
お母さんは、と聞くとふるふると首を振る。ひとりなの?と聞けば、うんうんと頷いた。
「そっかあ……私と同じだね」
今日、家に帰ってもあいつは居ないのか。今日だけじゃなくて、明日も、明後日も。
そんなことを考えていると、子猫がしゅんと可愛らしいくしゃみをひとつ。季節は11月。猫だってこんなところにいたら寒いだろう。
「そうだ猫ちゃん、うちにくる?」
どうせ君も私も、ひとりなんだから。そう言えば、子猫は少しだけ驚いたように息を呑んで、こくりと頷いた。
「よし!決まり」
そっと子猫を抱き上げると、ずっしりと重かった。降ろして、とでもいうように暴れる子猫を宥めながら、こんなに重い子猫を抱えているというのに、さっきよりも随分と軽い足取りで家路についた。