子猫と私の隠れ家
さあて、状況を整理しよう。
まず目の前の男の子。
栗毛色の髪、白い肌、華奢な手足、恐ろしいほど整った目鼻立ち。うん、知り合いにこんな子居ない。
え、てゆうか待ってこの子……
違和感を感じて、半分まで捲られた布団を全部めくると、白いふくらはぎが顕になった。
え……っこの子、下、履いてない!
よく見るとその子は元彼が置いていった白シャツ一枚だけを身にまとって居て、ズボンは履いていなくて、シャツの裾からグレーのトランクスだけがちらりと見えている。
え、待って、待って待って。
なんで下履いてないの。なんで同じベッドで寝てんの。まさか、まさか、私。
まさか、私………ヤっちゃった……?
「いやいやまさか、まさかね……だってまだ子供じゃん。私そんな趣味ないし」
言い聞かせるように呟くと、声が大きすぎたのか男の子が小さな呻き声と共に薄らと瞼を開く。
「んー………」
瞼の後ろから少しだけ色素の薄い瞳が現れて、ゆっくりと私の姿を映した。
そんな場合じゃないのに、綺麗だななんて場違いなことを考えてしまった。
彼は私の戸惑った顔を見ると、寝惚けた瞳を細めてふにゃりと柔らかく笑う。
「おはよー。おねーさん」
……………か、かわいい……。
……じゃなくって!!
「き、君なんでいるの」
恐る恐る声を掛けると、彼は丸い目をさらに丸くして首を傾げた。
「なんでって、おねーさんが連れてきたんじゃん。俺びっくりしたよ。まさか抱っこで運ばれるとは思わないじゃん」
「だっこ!?」
「そうだよ。まあおねーさん相当酔ってたみたいだしね。寝るまでずっと俺の頭撫でてたし。風呂一緒に入ろうとしてきたときはさすがに焦った」
「お、おおふろお!?」
動揺のあまり素っ頓狂な声が出た。
いやいやうそでしょ、まさか、私、本当に…彼と…!
思わず後ずさると、彼は少し悲しそうな目をした。
「やっぱりなんにも…覚えてないんですね」
そう掠れた声でシャツの裾を掴み、まんまるな瞳はうるうる濡れている。
まずい。これは本格的にまずい。
だって未成年だよ?しかも抱っこしてお持ち帰りして一緒にお風呂入ろって言って、全然記憶にないし考えられないけど多分……ヤって。だいぶやばい。
"24歳自称ウェディングプランナー、男子中学生を拉致し、性的行為を強要"
みたいなニュースになる………。
そしたら仕事は絶対クビになるし、一生結婚もできない!