ヴァンパイア†KISS

100年キスして†第2夜†

1898年、2月。

ロンドン郊外。

黒猫のエイダが巣くっている瓦礫の山のほど近くに。

その古い酒場はあった。

「ブルース。今夜も上々の客入りだな」

黒のマントをまとった銀髪の男、ウルフガングが店の扉を開け入りながらそう言うと。

肩まである銀髪を首の後ろで束ねた青い瞳の男、ブルースが嬉しそうに笑みを作る。

「はい、ウルフ様」

酒場の中は、その作りやテーブルなど全てが古い印象を与えたが、この廃れた街において、それはなんの問題もなかった。

20代前半の風貌をしたブルースがカウンターの中から笑顔を振りまくと、派手な化粧をした赤い服の娼婦が色目使いでブルースに囁く。

「あらぁ~、君、かわいいじゃない?どう?あたしを買わない?」

ブルースは爽やかに笑顔を浮かべると、

「ごめんなさい。僕は女性より、ワインが大好物なんです」そう言って娼婦に血色に光る赤ワインをコポコポと注ぐ。

「ざ~んねん!あ、そこの渋い黒マントのあなたでもいいわよぉ~」

人間には30歳前後に見えるだろうウルフガングがカウンターの端で酒を飲みながら娼婦を振り向く。

「悪いが、白の似合う女性が好みでね。血色は私には毒だよ」

娼婦は自らの赤の洋服に一瞬目をやると、つまらなそうに舌打ちした。




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