ヴァンパイア†KISS
「おぉ~!」

「さすが、ユーゴ様!なんて官能的なダンスだ」

「ヴァンパイア・キス」に集まっていたダンスカップルたちが口々に感嘆の声をあげ、色めき立った。

ヴァンパイア・ユーゴ。

彼は、大きくウェーブのかかった銀髪を腰まで垂らし、浅黒のエキゾチックな肌をダンスホールの照明に浮かび上がらせると、切れ長に光るバイオレットの瞳で魅惑的な視線をダンスホール中に振りまいた。

そして、エクスタシーを感じさせるアルゼンチン・タンゴを官能的に踊りながら、恋人のクローディアにぴったりと体を寄せる。

クローディアもまたウェーブのかかった銀髪を頭の上で束ね、扇のように肩まで広げた髪を官能的に振り乱すと、足を蹴り上げレの字のエロス・ラインを作る。

二人は、エロスに満ちていた。

「ユーゴ様とクローディア様のエロスタンゴは、陰と陽で例えるなら、陰を表す妖艶な月。対して、ウルフ様の甘美なワルツのステップは、陽を表す日の出の太陽…」

ブルースはユーゴたちのダンスを眺めながらウルフガングに近づくと、うっとりとしたため息をつきながらつぶやいた。

「だが、その甘美なダンスもパートナーがいなくては、披露することもできない」

デュオもその後ろからそう囁きながらウルフガングに近づくと、

「だろ?叔父上……」

と、落ち着き払った瞳でウルフガングを見据えた。

「デュオ。お前の父と母のタンゴは素晴らしい。お前も、タンゴを磨くがよい」

デュオの皮肉にも、ウルフガングの声は負け惜しみの一欠けらも感じさせなかった。

「あいにく、私のパートナーはタンゴが嫌いでね」

デュオはそう言うと、先ほどまで妖艶な顔を見せていたルシアの可憐な白のつぼみのような微笑に視線を送った。

「……叔父上、人間の子供をどうするつもりだ?」

その瞬間。

ダンスホール中がざわめきだし、カップルたちが一すじの道を作ったかと思うと、ユーゴとクローディアがゆっくりとその間を抜けてやってきた。




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