ヴァンパイア†KISS
二人のオーラはヴァンパイアの優劣がわからないカルロにさえただならぬ空気を感じさせ、カルロは無意識のうちにウルフガングの背に隠れた。

コツーンというダンスシューズの歯切れの良い音とともに。

燕尾服を着たユーゴと、大きく背中のあいた真紅のタンゴドレスをまとったクローディアがウルフガングの目の前に現れた。

ユーゴは首を振って長い銀髪を背中へ流すと、クローディアの肩を抱き皮肉めいた笑みをもらした。

「ウルフ…。ヴァンパイアにパートナーができないとなると、今度は人間か…?そんな子供どうする気だ?パートナーにしては背もつりあわないのではないか……?くく…」

ユーゴが笑ったのにつられるように、クローディアもまた皮肉をこめて笑う。

ウルフガングは瞳を細めて足元を見下ろすと、ゆっくりと顔を上げユーゴを凝視した。

「ユーゴ。私の地位も、パートナーも、このガイアでの生活も全て、お前にやろう。だが、このカルロには誰にも手出しさせるな。私はカルロに、ワルツを教えたいだけだ」

「……いったいなんのつもりか知らんが、私もそんな子供に用はない。いいだろう。人間とヴァンパイアの滑稽なダンスでも見させてもらうとするよ…くっくっ」

ユーゴはそう言うと、燃えるタンゴのような真紅の舌を突き出し、クローディアの頬をひと舐めした。

クローディアは「ふ…」と喘ぎをもらすと、魂を抜き取られたかのような官能的な瞳をユーゴに向け、そのままタンゴのようにユーゴの足に自らの足を絡めると、真紅の唇でユーゴの唇にむしゃぶりついた。

ウルフガングはそれを静かに見つめると、カルロの肩を抱き、ダンスホールの反対側へと歩き去った。




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