ヴァンパイア†KISS
感動の嵐の中で。

１０歳の人間の少女を抱きしめるウルフガングを気に留める者は、誰もいなかった。

ただ、この２名を除いては。

カルロは、エマの心をこの一瞬で奪われたかのような漠然とした空虚感に包まれていた。

（どうしたらあんな風に笑えるんだ。あの太陽のような笑顔、誰もが惹き付けられる……。この僕でさえ……）

そしてもう一人。

ダンスホールの隅でひっそりと全てを見ていた女性。

ウルフガングがかつて愛していた女性、クローディアはバイオレットの瞳を細めて唇を噛むとゆっくりとダンスホールをあとにした。




その夜の数時間の後。

ウルフガングは二人を修道院へ送り、地下房ガイアの自室へと帰ってきていた。

｢久しぶりのワルツ……。もう一度、力がみなぎってくるかのようだった｣

ベッドに横になり、思いを馳せるように瞳を閉じる。

（いつか、いつかエマとワルツを踊れたら……！）

ウルフガングが眠りに落ちようとしたその寸前。

唇にひんやりとした柔らかいものが触れた。

それは強引にウルフガングの唇を開かせると、

｢ハ……ァ…ん｣という吐息を彼の口へと吹き込み、さらに艶めかしく温かいものをその口の中へと割りいれた。

｢！？｣



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