ヴァンパイア†KISS
「ハ…ァ…」

クローディアの中の獣が呼び覚まされる。

白の鋭い牙を突き出したその顔は恍惚に満ちていた。

クローディアはカルロの首筋に唇を近づけると、

「致死量の加減はできないわ。なにせわたし、失恋して……死にたい気分なの……!!」

そう言ってまだ幼い柔らかい首にその牙を突き立てた。

ガッ………!!

「……うっ!」

カルロが苦しげに声をあげる中、クローディアは初めて味わう人間の血の甘さに思考がとろけそうなほど、酔っていた。

(なんて甘く芳しい人間の血……!下位のヴァンパイアにコントロールできるはずがないわ。人間の血の毒に犯されても吸い尽くしたい。そんな欲望を掻き立てるこの甘美な血……!)

「ク、ローディア…。致死量を超えると、どうな……る…の?」

カルロが息も絶え絶えに問いかける。

クローディアは血にまみれた唇を少し離すと、

「お前はヴァンパイアにはなれない。お前は死ぬのよ。……このわたしとともに、ね」

ほんとうに、悪くないと思った。

ウルフを想いながら、人間の甘い血で死んでいく。

このままウルフに愛されないなら、永遠の命になんの意味があるだろう……!



グジュ………!

致死量を超えた生々しい音。

クローディアは天を仰ぐと、美しい顔に甘美な笑みを浮かべ、そのまま仰向けに音をたてて倒れた。

カルロは鬱々とした表情で膝を落とすと、そのままゆっくりと前のめりに倒れる。

「………エ、マ……」

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