ヴァンパイア†KISS
カルロは首から血を流し倒れながら、エマを想っていた。

(エマ……せめて君に……笑いかければよかった……)

意識を失いかけているカルロの耳に、

「カルロ―――!!」

ウルフガングの声が近づいてきて、彼を抱き上げた。

「カルロ!!しっかりしろ!!」

カルロは、この世で最後の涙を流し、初めて彼に笑いかけると言った。

「ウ……ルフ。あなたのように美しく、生きたかった……。あなたには……エマを愛する資格が……ある。たとえ、ヴァンパイア…で…も」

カルロは美しい顔に一すじの涙を流すと、ゆっくりと瞳を閉じ、綺麗な笑顔のまま、

………息絶えた。

「………!!」

カルロの涙をそっと拭うと、ウルフガングは唇の端にぐっと力をこめて苦しげに歪ませる。

「……クローディア!」

そのまま後ろを振り返りクローディアの手を取ったウルフガングの目の前で。

クローディアの手は灰のように崩れ去る。

体は徐々に黒色に染まっていき、腕から崩れていくとそのまま黒の灰の山と化した。

「………カルロ……クローディア……!」

ウルフガングは流せぬ涙に、もどかしさを感じながら。

一縷の希望にすがる気持ちで、自らの腕を噛むとそこから血を吸出し、それを口に含んだまま。

カルロの唇にくちづけた。

以前、子猫のエイダを甦らせたこの血。

まだ少年のカルロなら、この血で甦ることができるかもしれない……!!

……ポタリ……。


「やはり……だめか…」

唇から血を垂らしながらウルフガングは焦燥に駆られる。

ぴくりとも動かぬ少年をその腕に抱きしめながら。




< 142 / 411 >

この作品をシェア

pagetop