ヴァンパイア†KISS
「それを語れば、怒りに満ちているユーゴがエマ様をどうするか、ウルフ様はよくわかっておられました」

「……ウルフは、彼はそのあといったいどうなったの!?」

カルロは青く澄んだ瞳をわたしに向けると、その強い意志を瞳にたぎらせながら言った。

「9年です。ウルフ様はその後、地下牢に入れられたまま、わずかな血しか与えられず、ある人によって助け出されるまで、9年も口をつぐんでおられたのです」

「………9年!!」



なんて、激しい愛………!!

わたしはウルフの強い愛に感動し、自然と涙を零していた。

「それは、哀しみと感動の混じった涙……です、ね?私もヴァンパイアになってもう100年なもので、涙の意味を覚えているか自信がないですが……」

「え、ああ…。そうよ。これは哀しみと感動の涙、ね」

言い当てられて少し照れたように笑うカルロは、なんだか可愛らしかった。

「……私は、ウルフ様ほどの強い愛を他に知りません。人間であっても、ヴァンパイアであっても……」

カルロはまたわたしの横に座りなおすと、この教会に思いを馳せるように目を細めた。

「そして、ウルフ様にまとわりつく過酷な運命は、牢を出てからもウルフ様を苦しめ続けました。……ウルフ様は、私に心臓の血を与えたせいで、その永遠の命を失われたのです」

「!?」

「ウルフ様はご自分の寿命をわかっておられました。その牢を出てからもう1年ほどの命だろう……と」



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