ヴァンパイア†KISS

100年キスして†最終夜†

1907年、1月。

ロンドン郊外、ガイアの地下牢。


ピチャン……。



水の音……?それとも……血の滴る音……?

ウルフガングは両腕を鎖でつながれたまま、視界も思考も定まらず、宙に浮いているような気分で顔を上げた。

牢の鉄格子が開く鈍い音がする。

(またわずかな血のえさか……)

そう思うウルフガングの目の前に、9年ぶりに見るその笑顔があった。

「……カ…ルロ……!」

「ウルフ様。お迎えにあがるのが遅くなって申し訳ありません。このガイアにはなかなか入れなかったものですから……」

カルロは金髪を隠すように毛皮の帽子をかぶりながら、

「金髪のヴァンパイアなどいませんからね。銀髪に染めようかとも思ったのですが…」

そう言って愛らしい笑みを作った。

「カルロ、急げ。いくら私が手引きしていても、父が気づくのも時間の問題だ」

牢の外側から聞こえたその声に急かされるように、カルロはウルフガングの鎖を鍵で解くと、倒れこむウルフガングをその肩で受け止めた。

「……その声…は、デュオ…か…?」

牢の外の壁にぴったりと背をつけ、周りの様子を窺っていたデュオが牢の内側に顔をのぞかせて言う。

「叔父上、久しぶりだな。もう少しおとなしくしていてもらいたかったが、そうもいかなくなったのでね」

「……なにか動きが起こっているのか…?」

ウルフガングは自分の足で立ち上がると、裸の上半身の胸を押さえ、苦しげに息をした。


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