ヴァンパイア†KISS
ドンと部屋の中に突き飛ばされ、エマはうつ伏せに倒れ苦しげに息をもらした。

そこは、10年前まで暮らしていた懐かしい家。

義理の父ベンと母エイダと3人で暮らしていた家。

そこにエマは、父ベンによって連れ戻されていた。

「まさか修道院にいるとはな……。あのガキと逃げて以来、ずっとお前を探していた。お前も考えたものだな。修道院じゃなかなか手が出せなかったぜ。だが、お前が成長してから連れ戻すのも悪くない、と思ってな……」

ベンはそう言うと、うつ伏せになっているエマを力づくで仰向けにさせ、

「……へへっ…」

と、笑うとご馳走を前にして舌なめずりをするようにその汚れた舌を突き出した。

「……ん」

エマは頭を打ち軽い脳震盪を起こして、意識は朦朧としていた。

苦しげに吐息を吐くエマの口元を見ると、ベンはゾクリとしたように喘ぎをもらした。

「……ハ…ぁ…やはりお前は娼婦の子だよ。それも上等なね。こんな色香はめったに拝めるものじゃあないぜ……!」

ベンはそのままエマの体に乗り上げると、その唇に向かって顔を近づけ唇を突き出した。

(い……や……わたしは……わたしが愛してるのは………!!)

エマは朦朧とした意識の中。

温かく懐かしい気配を感じ取っていた。

だんだんと近づいてくるそれを感じながら、エマは思っていた。

(これは……この気配は……!)

自然とエマの頬を涙が伝う。



「ぐっ………!!」

突如、ベンが苦しげな声をあげ、その体は天高く突き上げられていた。

ベンの首を片手で持ち上げ締め上げている人影の背中が、エマの目の前に現れる。




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