ヴァンパイア†KISS
「カルロにやられただけじゃ、足りないか?貴様のような者が触れられる女では、ない。貴様のような輩がヴァンパイアの血をたぎらせ、この血を汚すのだ……!」

ウルフガングはそう言うと、ベンの首に一気に噛み付き、「グジュ…ジュル…!」という生き血を吸う音が小さな部屋にこだました。

「……ウ…ルフ……」

エマはその様子を胸の十字架を握り締めながら見つめていた。

(ウルフがヴァンパイア……!ああ、でも、小さな頃から感じていたあの温かい気配も、この人のもの……!)

エマは肩を震わせ混乱していた。

小さな頃、母を殺したのもヴァンパイアかもしれない。

でも、ウルフは……優しい人、だ……!!


ダンッとベンが床に落ちた音とともに、ウルフガングがゆっくりとエマを振り返った。

そして血が滴る口からベンの汚れた血をベッっと吐き捨てると、バイオレットの瞳に全ての哀しみを詰め込んだかのような瞳で、笑った。

「エマ、今まで黙っていて済まない。私はヴァンパイアだ。そして……君の母親を殺したのも……ヴァンパイアなんだ……!」

エマはゆっくりと立ち上がると、ウルフガングに手を差し伸べる。

「……エ…マ?」

そして、マリアのように汚れのない顔で微笑んだ。

「でも、エイダを救ってくれたのも、ヴァンパイアのあなたでしょう?」

「!?」

「エイダが息を吹き返したのは奇跡だって思ってた。でも、ずっと子猫のままのエイダを見て、もしかしたらって……。わたし以外に懐かなかったエイダがあなたに懐いていたのも、きっとあなたが影から可愛がってくれてたからだって……」

「エマ……私は……ぐっ…!!」

「ウルフ……!!」




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