ヴァンパイア†KISS
首から血を垂らしたベンが、ナイフをウルフガングの足に突き立てていた。

「この、ヴァンパイアめ!!人間に勝てると思うなよ!!」

「ウルフ!!」

エマは咄嗟に駆け寄ると、ベンのナイフを持っている腕に思い切り噛み付いた。

「うう…!!この娼婦が!!」

ベンはナイフから手を離すと、エマをその腕でたたきつけた。

エマはそのままバンと音を立てて床に転がる。

「エマ……!!」

ウルフガングは足に突き刺さったナイフを抜き取って捨てると、ベンの首ねっこを持ち上げ、家の入り口まで跳ね飛ばした。

ウルフガングがエマに駆け寄ったその時。

エマは床に座ったままゆっくりと顔を上げると、

「わたしは娼婦じゃない。ヴァンパイアよ!ウルフと同じ、ヴァンパイアなの!!」

そう言って唇からベンの血を滴らせ、強く美しいヴァンパイアのように、微笑んだ。

「エ…マ……!!」

エマをきつく抱きしめるウルフガングの後ろで、ベンは悔しげに立ち上がると、

「ヴァンパイア女め……!オレは絶対にお前達を逃がさないぞ……!」

そのまま家を出て夜の街に走り去っていった。





教会の十字架が夜の闇に甘美に浮かび上がる。

その中にうごめく、二人の影。

いや、一つのカップルが美しいステップを踏み鳴らし、ワルツの3拍子を美しく奏でる。

「エマ……こうして君と踊れる日が来るとは…!」

「わたしは毎日あなたと踊っていたわ。ここでこうしてマリアの前で、ね……」




< 153 / 411 >

この作品をシェア

pagetop