ヴァンパイア†KISS
1週間が経過したある夜。

ロンドン郊外のとある酒場で、人間たちの様子を窺う二人のヴァンパイアの影があった。

「聞いたか!?とうとうキングストン研究所が動き出すらしいぜ!1年前に建てられた時はどうかと思ったけどよ。でもそんなものが建てられたってことは、ほんとうにいるってことだな。ヴァンパイアがよ!!」

「ああ、なんでも女のヴァンパイアが現れたって噂だ。金髪の美女らしいぜ。ヴァンパイアにしとくには惜しいくらいの、な」

ガタン!

とイスを倒した音に客たちが振り返った。

カウンターに座っていたその男は「……失礼」と冷静にイスを戻すと再び着席し胸に揺れる十字架を握り締めた。

「……ウルフ、落ち着け。彼女が連れ去られたとしても、彼女がヴァンパイアではないことは奴らにもわかるはずだ。キングストンにも仲間を潜り込ませてある。…少し、頼りないがな。それにあなたの今の体の状況では、今すぐに助けに入るのは、無理だろう……」

デュオは隣に座るウルフガングが苦しげに胸を押さえて顔を歪ませるのを見ながら、赤ワインをすすった。

「……時を待つんだ。あなたはただでさえ弱っているところに人間の女と交わり、悪化させてしまった。ヴァンパイアと寝ればその力を増大できるものを。……良ければ、女をあてがうが……?」

「断る……!」

「……そう言うと思ったよ」

デュオは呆れた顔でウルフガングのグラスに自分のグラスをチン!と当てると、舌を突き出しながら赤ワインを口へと注ぐ。

「やはり……血のブレンドされていないワインはまずくて飲めやしない、ね」



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