ヴァンパイア†KISS
さらに1週間が経過していたある日。

キングストンの研究室にこもり、密やかに会話する2人の男がいた。

「バーナード博士!やはりどこをどうとってもこの血は人間のものです。密告はデマだったようですね……。彼女の体のどこにもヴァンパイアのものである形跡はないですし」

ボイルの報告を聞いたバーナードは静かに検査結果報告書を見ながら考えていた。

「……確かに彼女の体にはヴァンパイアのものである形跡はない。だが、1週間前には全く結果に出なかった妊娠の兆候が出ているのだよ、ボイルくん」

「え?ああ、確かに今日は吐き気で食事できなかったようですが。それが何かヴァンパイアと関係が……?」

バーナードは金髪を神経質に撫で付けると、にやりと不敵な笑みをもらした。

「1週間前に全く兆候がなかった赤ん坊が、今は4ヶ月ほどの大きさにまで成長しているのだよ。この分だとあと2ヶ月もたたずに生まれてくるだろうな……」

「な…!?」

「なんという成長スピードだ!!これこそがヴァンパイアである証ではないか…!!」

その研究室の外側で。

青の瞳を妖しく動かしながら中の様子を窺う影があった。

(……妊娠!!ウルフ様のお子か……。すぐにデュオ様に報告だ)



「……ん…!」

キングストン研究所の固く閉じられた一室で。

ベッドに横たわる美女の姿があった。

白い検査服を着せられて眠る彼女は夜中に吐き気をもよおすと、ベッドの傍らにしゃがみこんだ。

「うぅ…は…ぁ…」

一旦吐き気が落ち着くと、彼女はそっと自らの腹部に触れた。

「まさか……子供…が?」

彼女は美しい金糸の巻き毛を両手でかき乱すと、嗚咽をもらした。

「う…うぅ!……ウルフ!会いたい……!あなたに会いたい!!」

エマは妊娠したことが嬉しいのか悲しいのかよくわからなかった。

ただ今は、ウルフガングに会いたくて堪らなかった。


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