ヴァンパイア†KISS
そうして、この「ヴァンパイア・キス」で最も甘美なダンスは、新しい皇帝と女王を誕生させた。

ヴァンパイアたちはユーゴを退け、ウルフガングをこのガイアの主として受け入れた。

そして、エマもウルフガングの妻と認められ、その娘とともにこのガイアで暮らすことを許された。

この出来事がヴァンパイアの間に、一つの伝説を作る。

『「ヴァンパイア・キス」で祝福を受けキスをした二人は、このガイアの主となる』

そしてウルフガング、エマ、その娘の3人は、この10ヶ月間ほどのちの1908年2月まで、ガイアでつかの間の幸福の時を過ごした。

しかし、その間にもウルフガングの体は日に日に死へと近づいていった。

1908年、2月。

ある事件が、人間をヴァンパイア弾劾の道へとひた走らせていく。

キングストン・ヴァンパイア研究所を監視するために送り込まれていたブルースら数名が研究所の者によって捕らわれ、人間が永遠の命を得るための実験体となった。

何名かのヴァンパイアが実験による心臓の傷でその命を落とした。

それを知ったウルフガングはデュオたち配下のヴァンパイア数十名を引き連れ、キングストンに怒涛のように押し寄せた。

怒りに震えたヴァンパイアを止めることは人間にとってたやすいことではなかった。

人間の方にも数十名の絶命者を出しながら、ヴァンパイアたちはブルースほか生き残りの数名の救出に成功する。

しかし、この出来事は、人間のさらなるヴァンパイアへの興味、畏怖心、そして永遠の命への欲望を増大させる結果となった。

そしてついに。

1908年、3月。

ヴァンパイアと人間の闘いが始まる。

ヴァンパイアたちは彼らの聖地である「ヴァンパイア・キス」を護るべく、ガイアを封鎖し、100年後までその地を封印することとし、その地は閉ざされた。

散り散りに散った彼らには過酷な運命が待っていた。

研究所によって心臓が弱点と知り尽くされていた彼らには命を落とす者が後を絶たなかった。

主に生き残ったのは、強いヴァンパイアパワーを持つ高位の者たちで、彼らも期を探るべくそれぞれ人間から身を隠すこととなった。




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