ヴァンパイア†KISS
わたしはエマが眠ってからしばらくの間、眠るシエルを抱きかかえていた。

シエルは金色の産毛を天使のようにふわふわとまとって、とても綺麗な寝顔をしていた。

この子はこれからどんな道を歩んでいくんだろう。

わたしのママの魂を宿すエマから生まれた男の子。

そしてエマはわたしの先祖のような母のような存在で。

遠い親戚のようでもあり、兄弟のようでもある存在に不思議な感情を抱いていた。

ふいに、その可愛らしい頬にキスしたい衝動に駆られ、わたしはシエルに誕生の祝福のキスをした。

シエルが一瞬微笑んだような気がしたのは、わたしの気のせいだと思うけど。



その日、わたしとカルロはシエルと猫のエイダを連れて近くの教会へと足を運んだ。

エマは100年の時を眠っていたことや出産のこともあり、まだ体力が回復せず地下牢で一人休んでいた。

生まれて初めて外の空気をその柔らかい肌に触れさせたシエルは、「うっく…」という可愛らしい声を漏らすと、青い瞳をぱちくりさせた。

そう、シエルの瞳は青かった。

ウルフは銀髪にバイオレットの瞳だったが、エマの金髪と青の瞳をそのまま受け継いでいた。

だけど、その青の瞳が時折、光の加減によってバイオレットに輝くように見えた。

「不思議な瞳だね…」

わたしがシエルを抱きながら覗き込むようにそう言うと、

「シエル様は100年もエマ様の体内におられましたから。今までヴァンパイアであってもそのような生まれ方をなさった方はいないでしょう。きっとどんなヴァンパイアも持っていない特別なエナジーを持っていらっしゃるのではないでしょうか?」

カルロが青く晴れ渡った空を見上げながら言った。





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