ヴァンパイア†KISS
カルロはそれを見ながらちょっと考え込むようにすると、

「エイダは、シエル様にそれをつけて欲しいのではないでしょうか?」

と、つぶやいた。

「エイダはウルフ様にその十字架を託されました。その十字架をどうするかは、エイダの意志に任せましょう」

シエルがそんなこと何も関係がないかのように眠る中。

わたしはエイダの十字架を手に取ると、壊れるかと思うくらい柔らかいシエルの首にそっとそれをかけた。

その瞬間、眠っているシエルの額に、バイオレットに光る三日月の形のアザが現れ、わたしとカルロは驚きで目を見開いた。

「……これは、十字架に宿っているウルフ様のヴァンパイアエナジーとシエル様のエナジーが共鳴しているのかもしれません」

カルロがその大きな青の瞳を見開きながら言った。

「月は昔からヴァンパイアのエナジーに影響を与えていると言われています。100年前に、私は1000年に一人の確率で月のエナジーの影響を強く受けるヴァンパイアが生まれると聞いたことがあります。……まさか、シエル様が……」

カルロはそう言うと、シエルを見つめたまましばらく黙っていた。

シエルの額に現れた三日月のアザはそのまま1分ほどで跡形もなく消え去った。

「カルロ、月の影響を強く受けるとどうなるの?」

黙りこくったカルロをせっつくようにわたしが問いかけた。

「……わかりません。ただ、ヴァンパイアたちにも相当な影響を与えるだろう強大なヴァンパイアエナジーを持ち得るかもしれない、ということだけです」

相当な影響を与える強大なエナジー……。

わたしはこんな無垢な顔で眠っているシエルがそんな力を持っているなんて信じられなくて、その胸に輝く十字架とシエルの顔を交互に見つめていた。


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