ヴァンパイア†KISS
パパが嬉しそうに微笑むのを横目に見ながら。

わたしはどうしていいのかわからなくなっていた。

まさか婚約の相手がかずちゃんだなんて。

断ろうと思っていた決心が揺らいでいた。

かずちゃんがアメリカに行ってしまうと聞いたときの、哀しみ。

婚約者がいると聞いたときの切ない想い。

しばらくしてその気持ちは薄らいでいったけれど、そのかずちゃんから求婚されてその時の恋心が鮮やかに甦ってきていた。

……わたし、自分の気持ちがわからない……!!

「花恋、お前が和希くんを好きだったというのはパパにはわかっていたよ。今までつらかったろうが、和希くんもこうして花恋を幸せにしたいと言ってくれている。彼ならパパも花恋を安心して任せられる。花恋、この婚約受けてくれるな?」

パパが優しい面持ちでわたしの肩を抱いた。

「花恋、これは運命の赤い糸だって思わない?こんなに離れていても僕達はまたこうして繋がったんだ」

運命の赤い糸……!

かずちゃんはその離れていた糸をたぐり寄せてくれたのだろうか、と混乱する頭の中で考えていた。

デュオ………!

わたしはデュオとの細い糸が次第に離れていくのを感じながら。

「……はい。かずちゃんとなら…」

そうつぶやいていた。


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