ヴァンパイア†KISS
「シエル……?」

デュオが誰だというようにわたしを振り返った。

「シエルは目覚めたエマが2日前に産んだ子なの。ほんとうにシエルなの?あんなに小さな赤ちゃんだったのに…!」

少年は小さな桃色の口角をきゅっと持ち上げて微笑むと話し出した。

「そうだよ。僕は100年も母さんの体内にいたからね。その間にたくさんのヴァンパイアエナジーを蓄えていたんだ。だから何かきっかけがあればすぐに成長できる。母さんの精神を通して過去のことや、ヴァンパイアのことも知ることができた。見た目はこんなだけど、僕はもう大人だよ」

「なるほど。ウルフの子なら有り得るかもしれない。彼はこの数百年のうちでも最も強いヴァンパイアエナジーを持っていた」

デュオが納得したようにつぶやいた。

「父さんはその強いヴァンパイアエナジーを僕にくれたんだ」

シエルはそう言って十字架を自分の頭の上に突き上げると、ガラス越しに見える満月に向かって掲げた。

「ほら、こうするときれいでしょ?父さんのエナジーはほんとうに美しいんだ…!」

シエルが掲げる十字架は月の光に反射するように、金色の中にバイオレットの光の粒子を散らしながら、その100年の輝きを誇らしげに解き放った。

「シエル…。どうやって急にそんなに大きくなったの?いくらなんでも早すぎるわ…」

わたしがシエルの顔を覗き込むように腰を屈めると、

「こうやるんだ!」

そう言うと彼は背伸びしてわたしの顔を両手で挟んだ。

避ける間もないくらい素早くわたしの唇に顔を近づけると、

「ちゅっ」という可愛らしいキスをした。


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