ヴァンパイア†KISS
その緊迫を破るかのように、ルシアの上品で澄んだ声が聞こえてきた。

「お兄様、冗談がすぎるんではないですか?ご婚約者を前に、そのようなことを言ってはいけませんわ」

ルシアは薄い笑みを浮かべ、目の前のわたしの瞳を一瞬も目を逸らさずに見つめると、兄の腕に親しげに触れた。

……ズキン。

デュオとルシアの間には、わたしなんかじゃ絶対に入り込めないような何百年もの歴史がある。

それを見せ付けられたようで、胸が切なくうずいた。

「和希、座りなさい。デュオはお前の兄になったんだ。デュオは大切なプロジェクトの一員でもある。お前にもそれは充分説明したはずだが?」

神藤社長の声は重々しく威厳に満ちていた。

かずちゃんも神藤社長の重々しい意志を感じ取ったのか、納得はできない様子ではあるが、静かに座った。

「…それでいい、和希。お前はまだ子供だ。このデュオや私から学ぶことはたくさんあるだろう」

かずちゃんはその言葉を聞くと、下を向きながら小さな声でつぶやいた。

「……ヴァンパイアなんて、認めない」

わたしは一瞬、自分の耳を疑った。

……ヴァンパイアって………言った……?

「父さん!僕はヴァンパイアに会社を任せるなんて反対だ!このままじゃ父さんの会社『ガイア』はヴァンパイアに奪われてしまうだろう。その上、こんな……同居なんて!……花恋だって、嫌なはずだ…!」

かずちゃんは吐き捨てるように言うと、わたしを振り返った。

「花恋、ごめん。デュオとルシアはヴァンパイアなんだ。すぐには信じられないかもしれないけど。こんな同居だなんて、僕は反対したんだ。…ほんとうに、ごめん!」

かずちゃんは申し訳なさそうにわたしに頭を下げた。

かずちゃん………。

………わたしだって、ヴァンパイアの血が流れているのに………!!








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