ヴァンパイア†KISS
……トクン………!

デュオの声は静かで、切なくて………胸がきゅんと締め付けられるようだった。

デュオは振り返ると、真剣な眼差しで言った。

「カレンが欲しい」



わたしの心臓の音だけが世界中の音みたいに、響いていた。

自分の体なんかどうなってもいいから、デュオの胸に飛び込みたい。

本気でそう思った。

今にも体が動き出しそう、そう思った瞬間。

デュオはくるっと真面目な顔をからかうような表情に変えた。

「そう言えば……カレンが寝ている間だったら何しても大丈夫だったんだな。エクスタシーを感じないわけだから、さ」

……バフ!!

わたしが全力投球した枕はひょいと避けたデュオの後ろを通り壁に当たって跳ね落ちた。

「…残念!2度も当たらないよ」

デュオはそう言って楽しげに笑うとわたしの部屋を出て行った。


………か、顔が真っ赤だよ、わたし!!

純朴な乙女をからかわないでよ、デュオ……!

わたしは真っ赤になった自分のほっぺを両手で包んでため息をついた。

………でも、わたしのこと元気付けようとしてくれたのかな?

不思議とデュオの言葉で心配が吹き飛んだように晴れやかだった。

……ありがとう、デュオ……。


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