ヴァンパイア†KISS
「……………!!!」

一瞬、空気が凍りついたように、何もかもの時が止まったように……思えた。

月が、ユーゴの腕を天高く縛り上げる。

バイオレットの月光が剣ごとユーゴの腕に巻きつくように絡み、その腕を天高く突き上げていた。

「……ぐ…う…!」

ユーゴが低いうなり声をあげる。

「ユーゴ。カレンは僕の大切な人だ。傷つけるなら……あなたを殺さなければ、いけない」

この声……は…!?

少し高く、澄んだ声。

振り返ると、天使を同居させたようなその人が立っていた。

「……シエル!!」

シエルは部屋の入り口でユーゴに静かに視線を送りながら佇んでいた。

その体に黒のマントを羽織り、額にはバイオレットムーンの紋章が輝く。

「……ウ…ルフ……」

ウルフ…?

ユーゴは確かにシエルを見つめながらウルフとつぶやいた。

……混乱しているんだ。

ウルフの息子のシエルを見て、ウルフだと思い込んでいる。

ユーゴは右手をバイオレットの光のくさびに縛られたまま、まるでウルフと100年ぶりの再会を果たしたように固まっていた。

「シエル、カレンを頼む」

デュオはそう言うと、ユーゴに向かって走り出そうとした。

その瞬間、デュオは苦しげに顔を歪め、ベッドの下に倒れこんだ。

「デュオ!!」

わたしがベッドから降りてデュオに走り寄ろうとしたその時。

わたしは腕を掴まれ、シーツの中へと引きずり込まれた。





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