ヴァンパイア†KISS
空気が張り詰める。

真剣に見つめあう二人から、空気を通して心の波動を感じられるくらいに張り詰めた空気。

デュオは剣をシエルから離して彼の上から降りた。

「シエル…私は…」

その時、張り詰めた空気が一気に音をたてるように動いた。

二人の動きに注意しすぎていたわたしは、ユーゴの動きに全く気を払っていなかった。

ユーゴは捕らわれていた右手を引きちぎるように強引に前へ突き出すと、わたし目掛けて飛び出した。

「ぐぁあああ!」

雄たけびをあげてわたしの体を捕まえると、首に向かってその禍々しく鋭い牙を突き出した。

噛まれる……!!

「カレン!!」

デュオとシエルが同時に叫んだのが聞こえた瞬間。

シエルは素早く起き上がると、唇をきゅっと締め、瞳をバイオレットに瞬かせた。

眩しいほどのバイオレットの光が、シエルの体全体から光線のようにユーゴへと一直線に伸び、ユーゴは弾かれたように後ろの壁へと吹き飛んだ。

その瞬間、ハッとして後ろを振り返ろうとしたわたしの顔のすぐ横を剣が空を切るようにユーゴ目掛けて飛んでいくのが見えた。

剣を飛ばしたデュオが苦しげに息を吐きながらその剣の行方を見守る。

剣は真っ直ぐにユーゴの首に突き刺さって貫通し、剣はユーゴごと壁に突き刺さった。

「……あ…」

ユーゴは首から血を流し、瞳を見開いたまま壁にもたれ動かなくなった。

「…父上……ぐっ」

デュオが刺された肩を押さえながら苦しげに前へ倒れかける。

「デュオ!」

わたしがデュオに駆け寄ろうとしたその時。

シエルはデュオの体を抱きとめ、静かにつぶやいた。

「…デュオ兄さん」





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