ヴァンパイア†KISS
デュオは肩で息をしながら抗うこともなく、シエルの肩にもたれかかった。

「シエル…お前の瞳に嘘はない。私はお前のカレンへの愛を信じよう。私は……今ここでお前を殺したほうがいいのかもしれない。だが、私の体力がどこまで持つかわからない以上、お前の力が必要だ」

「デュオ兄さん……」

「お前は、カレンのためなら死ねる。違うか?」

シエルは色濃いバイオレットの瞳を空を見つめながら細めると言った。

「はい、デュオ兄さん。あなたと同じように」

デュオはシエルから体を離し、シエルをじっと見つめ言い放った。

「お前の命、カレンに預けよう。だからお前は、カレンに望まれる以上、生きなければいけない。わかったな?シエル」

「はい……デュオ兄さん」

シエルはそのままデュオの胸にもたれかかると瞳を伏せた。

シエルの体と声は震えていた。

兄のような存在に認められた喜びと感謝、そして自分の使命への熱い想い。

全てがシエルのその震える体から伝わってきて、わたしはむせび泣いた。

シエル……ありがとう。

こんなわたしを愛してくれて、護ってくれてありがとう。

わたしは、二人に何が返せるというのだろう……?

こんなに二人が大好きなのに、人間にもヴァンパイアにもなり切れないわたしは、何もかもが中途半端、だ。

デュオ……シエル……。

わたしに、何ができる………?





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