ヴァンパイア†KISS
「デュオ様!!ご無事ですか!?」

慌てた様子で額に汗を流しながら入ってきたのはブルースだった。

振り返ったわたしたちの前で、ブルースは硬直したように立ち止まると声を震わせて言った。

「…あ…あぁ…ユーゴ様…!!」

その時、首を貫かれたユーゴから地の底を這うようなうめき声が低く響いてきた。

ユーゴはそのバイオレットの瞳をそれ自体が生き物のように怪しく光らせると、一気に首を貫く剣を引き抜いた。

「……バイオ…レット……ムーン、その力……いずれ…必ず…!」

ユーゴの首の傷はみるみる塞がっていく。

彼はそのままユラリと立ち上がると、剣をこちら目掛けて真っ直ぐに振りぬいた。

「カレン!!」

デュオが飛び込むようにわたしに覆いかぶさった瞬間、剣はわたしたちの上を突っ切っていった。

わたしはデュオの胸の中で叫ぶ。

「シエル!!」

剣は真っ直ぐにシエルに向かって飛んでいた。

シエルは瞬きもせず瞳を見開いたまま、右手を突き出すとバイオレットの鎖のように連なる光をその手から飛ばすように放った。

その鎖は宙を飛ぶ剣を巻きつくように縛りあげると、そのままシエルの右手の中にすっぽりと収まるように剣を落とした。

「シ…エル…」

シエルはわたしの声にゆっくりと振り向く。

「デュオ兄さん、この剣、すごくいいよ。兄さんが使うといい」

そう言って微笑んだシエルの顔は太陽のようだった。

窓の外では三日月がしっとりと微笑むようにわたしたちを見下ろしていた。

カーテンが風でバサバサと揺れる中、ユーゴの姿はもうここにはなかった。

「デュオ様…ご無事でよかった…」

ブルースが気の抜けたような声でへなへなと床へ座り込んだ。

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