ヴァンパイア†KISS

孤独

ヴァンパイアは傷を負っても、人間のそれより格段に治癒が早い。

特に高位のヴァンパイアほど、その能力は顕著だ。

人間にとっては深手でもヴァンパイアの代謝の早い血はそれをいとも簡単に治癒してしまう。

デュオもまた高位であるが故に、そのユーゴに刺された肩の傷の治癒は早いかと思われた。

でも、弱っていたデュオの体に、その傷は少し深すぎた。

普通なら小一時間もあれば充分であろう肩の傷がなかなか完治しないとわたしが心配しだした3日後のその日。

神藤社長がわたしたちの採血をしたあの時の医者を伴ってこの郊外の城までやって来た。

ヴァンパイアが活動的になる月も高く上ったその時刻。

神藤社長は重く硬そうな鞄を床に置くと、伴ってきた医者に目配せし、ベッドに横になるデュオの診察を促した。

「ドクター、デュオの傷は大丈夫でしょうか?」

不安げに問いかけるわたしに、ドクターはデュオの肩に包帯を巻きながら答える。

「これだけ深い傷だ。人間ならたった3日でここまでの治癒は不可能ですが、とんでもない回復力です。大丈夫ですよ。確実に治癒に向かっています」

ドクターの落ち着いた声にわたしはほっと胸を撫で下ろした。

ドクターは眠っている様子のデュオにちらりと目をやると、わたしの傍までやってきて耳打ちした。

「ですが、少し衰弱が見られます。傷は治っても、こちらはやっかいかもしれません」

わたしにだけ聞こえるように言ったドクターの声に、わたしは眉根を寄せ小さく吐息を吐いた。

「ドクター」

ドクターは突然後ろから寝ていると思っていたデュオの声が聞こえたことに驚きで肩を震わせながら振り返った。

デュオはベッドに片膝を立て、その上に包帯を巻いた腕を投げ出しながらこちらを凝視していた。

艶っぽい微笑みで言う。

「ヴァンパイアに小声は無意味でね。悪い知らせに目が覚めてしまったよ」





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