ヴァンパイア†KISS
突然、スカートのポケットに入れていた携帯の着信が鳴った。

着信は……サラからだ…!!

そういえば最近連絡を取っていなかった。

サラ、元気かな。

サラの元気で力強い笑顔を思い浮かべて自然と笑顔になる。

「もしもし、サラ?」

「…………」

「もしもし?」

返答のない電話の向こう側に、わたしは訝しげに首を傾けながら携帯に耳を押し付けた。

「……時は満ちた。ウルフとエマの血を奪いガイアの封印を解き、私がヴァンパイアの王となる時が。ウルフの娘よ、生まれたことを悔やむがいい。私はお前の父を殺す。そして、奴を愛する全てのものを!」

おぞましい声だった。

背筋が凍る。

思わず携帯を滑り落としそうになったその時。

庭から、悲鳴のような叫び声が聞こえた。

窓の外に顔を突き出すと、わたしの右手に城の筒状に高くそびえる塔の一番上。

空に剥き出しになったその天辺に、円を描くように巻き上がる風を受けながら、エマが白いドレスのスカートをはためかせ、男に後ろ手を縛られていた。

「エマ!!」

「エマ様!!」

わたしとカルロが見上げながらほとんど同時に叫ぶ。

エマはだらりと首を垂れ、その美しい金髪を強く吹き付ける風に任せていた。

エマの後ろには、銀髪の逆立つ髪をもつ男。

彼は、残忍なまでの切れ長なバイオレットの瞳をさらに細め、わたしたちを見下ろしていた。

遠目だが微かに見える。

彼の右目は何かに切りつけられたような一直線の深い傷にえぐられていた。

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