ヴァンパイア†KISS
男が手にしていた携帯を耳につけ話し出す。

「お前もヴァンパイアの端くれだ。そこからでも見えるだろう?私のこの傷が!100年前、ウルフにつけられたこの傷が!ウルフはさすがだよ。普通ならこんな傷、いとも簡単に治せるが、奴のヴァンパイアエナジーは私の治癒力をも奪った。そのおかげでバイオレットの瞳の力を失った私は、ヴァンパイアの女たちの心を操り私に忠誠を誓わせる能力も奪われたよ。……お前にわかるか?この悲しみが…!!」

携帯から聞こえる恨みの声にわたしは耳を塞ぎたい衝動に駆られた。

でも……こんなのは、間違っている!!

「あなた…オズワルドでしょう?その昔、エマにキスの刻印を刻み、彼女を操ろうとした。でも、既にウルフのキスの刻印を持っていたエマはそれを免れた。その代わり、心が混乱したエマは100年も眠ることになった…そうよね?」

オズワルドが高らかに笑い声を上げる。

「…ハハハ!!その通りだよ。私がオズワルドだ!ガイアが封印を解くその時を待っていた。そして、目覚めたエマをウルフの目の前で殺すその時もな!!」

なんて、下劣なの…!!

オズワルド、あなたはどこまでウルフとエマを苦しめたら気が済むの?

目頭に熱いものがこみ上げてくるのを唇をかみ締め、必死で堪える。

その時。

階下から激しいまでの叫び声が聞こえた。

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