ヴァンパイア†KISS
デュオの淡々とした口調が逆にその決意の固さを窺わせた。

わたしは彼の胸に手を回し、ぎゅっと抱きしめる。

行かないで。

デュオ、わたしを置いて行かないで……!

予感がする。

これ以上ないほどの、嫌な予感。

デュオの心臓の鼓動が手を通じて伝わってくる。

愛しいのに。

あなたの心臓の鼓動すらこんなに愛しいのに……!

……わたしは、あなたを失うことだけは、絶対に耐えられない!!

「デュオ、お願い。わたしも連れて行って。この機会を逃したらもうウルフに会えないかもしれない。わたしは強くないけど、それでも、エマとウルフを助けたい。サラも助けたい。みんなわたしの大切な人たちなの。お願い、デュオ!」

沈黙が流れる。

デュオ、お願い、答えて。

怖くて、顔を上げられない…!

デュオはわたしの手をそっと下ろさせて振り向いた。

バイオレットの瞳が斜めに降り注ぐ月光に照らされてミステリアスに輝く。

デュオはわたしの頬に手を添え、わたしの瞳を覗き込むように見つめた。

「カレン、誓えるか?何があっても、自分の命を優先する。私は、お前を失うことだけは、絶対に耐えられないんだ、カレン」

「……誓うわ」

デュオはわたしの涙をそっと拭い、自分の額とわたしの額をコツンと合わせた。

目を閉じると、デュオの息遣いを感じる。

泣きたいほどに愛しい、その命。

唇に温かな感触がゆっくりと伝わってくる。

瞳を閉じててもわかる。

デュオのキスだ。

ごめんなさい、デュオ。

わたしはこの約束だけは、守れない。

初めて、あなたにつく嘘。

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