ヴァンパイア†KISS
全員が息を詰めるのがわかった。

城の最上部を見上げたわたしたちは、その光景に、息を呑む。

城の最上部、塔の螺旋階段を上ったその上の、激しく風が吹き付けるその天辺に、十字の杭に縛り付けられたエマがいた。

エマは金色の巻髪を風にさらしながら、青白い顔をだらりと地上へ向けていた。

「エマ!!」

叫ぶわたしの肩をデュオが抱く。

塔の天辺はかなり遠いけど、ヴァンパイアの目を持つわたしにははっきりと見て取れた。

エマの首筋から、赤い鮮血が滴り、白のドレスを染めているのが……。

その後ろの闇から、ゆっくりと、右目に傷を持つ男が現れた。

その男は勝ち誇ったように唇の両端を吊り上げると、高らかに嗤い始めた。



「……くっくっく、あっはっはっは!!」



男は闇夜に浮かぶ半月を背に、剣を突き上げ、冷笑を浮かべた。


「ウルフの娘と息子よ!1時間後に、貴様らの母と父を鮮血に染めよう!…待っているぞ!貴様らがここまで上がって来るのを!!」


「オズワルド!!!」


身を乗り出して叫ぼうとしたわたしの目の前で、デュオの天をも突き抜けるような高らかな声が響き渡った。

バサリと黒のマントが舞う。

デュオは剣を天にも届くほど突き上げると、叫んだ。

「血に染まるのは、お前のほうだ!!オズワルド!!」

牙を突きたて、激しい形相で天を睨むデュオをわたしは呼吸も忘れて見つめていた。

ヴァンパイアの本能を剥き出しにした表情。

シエルに怒った時と、同じだ。

こんな時のデュオは、手がつけられない。




< 313 / 411 >

この作品をシェア

pagetop