ヴァンパイア†KISS
「……人形?」

どうしようかと佇むわたしの横をブルースがスタスタと通り過ぎた。

「危険ですから、僕が確かめてきますよ。任せてください!」

ズンズンと進んでいくブルースを眺めながらシエルがつぶやいた。

「あ~あ、行っちゃった。あの気配は間違いない」

「シエル?なんなの?」

にっこりと微笑んで言う。

「もと人間のヴァンパイアだよ」

………まさか!!

暗闇の中、ブルースは2つの影の前で立ち止まり、金髪の女性の頬をつんつんと突いた。

「……わ!」

突然、ブルースの驚いたような悲鳴が聞こえ、わたしは息を呑んだ。

パチン……!!

と、ダンスホールの照明が点く音とともに、明るい照明の中で視界が開けた。

「!?」

明るくなったホールの中央で、ブルースが女性とキスをしていた。

いや、のけぞるようにそのキスを受けているブルース。

少しして、ブルースが力任せに女性を振りほどいた瞬間。

目の前に信じられない光景が映った。

「ヴァンパイアのくせに、キスが下手ね」

長い金髪を片手で振り払い、真っ赤なルージュの女性が色っぽく微笑んだ。

「………サラ!!」

ペロリと下唇を舐めるサラ。

「お久しぶり、カレン。サラ・キングストンの城へようこそ」

そう言って投げキスをしたサラは、以前と何も変わりがないように美しい姿で立っていた。

………サラ……!!!

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